
1990年の開館以来、人気を博していた大阪の海遊館ですが、それを入場者数で上回ったのは、沖縄の美ら海水族館でした。2002年に老朽化していた旧館を閉鎖し、新しい施設に完全移行する形でのリニューアルを実施すると、7500トンの「黒潮の海」水槽で話題になり、年間を通じてフル稼働した初年度となる2003年度には、250万人近い入場者を集めることとなりました。
その後も沖縄美ら海水族館の人気は衰えず、2008年には年間入場者数310万人を越え、その年の上野動物園の入場者数(約290万人)を上回りました。首都にある動物園を、リゾート地とはいえ大都市圏から離れた立地の水族館が上回ったのですから、これは快挙と評してよいでしょう。
一方で、ほぼ同じ時期に人気を博した、動物園における旭山動物園も、立地だけを見れば恵まれた状態とは云えなかったわけで、優れた展示があれば、大都市圏に近接した施設でなくとも、多くの集客が見込める時代になったと云うこともできそうです。
なお、沖縄の美ら海水族館は、その後の2010年にも、年度末に近い2011年3月11日に発生した東北大震災と、その後の電力不足・計画停電等を踏まえた臨時休園の影響もあったにしても、上野動物園を上回る数値となっています。
(その後の数年は、2011年4月より、ひさしぶりに上野動物園にパンダが再登場したこともあってか、上野動物園の入場者数が美ら海水族館のそれを上回っています。)
上野動物園の休園・パンダ登場についての参考記事:【上野動物園熊猫的新聞】
第3回 地震を乗り越えて 2011.4.2
第4回 一般公開に向けて 2011.4.8
第5回 待ちに待った一般公開 2011.4.15
この時期に新規オープンした水族館としては、2005年のエプソン品川アクアスタジアム、2012年のすみだ水族館に京都水族館と、海に接していない、いわゆる内陸型都市水族館が目立ち、それぞれ人気を博しています。
特に京都水族館は、初年度に230万人ほどの入場者を集め、その年の2位にランクインしていますが、翌年以降は人数を非公表とする方針へと転じた模様です。
また、リニューアル組としましては、都市型水族館の先駆けともいえるサンシャイン国際水族館が、2011年にリニューアルオープンし、リニューアル以前に比べて倍増近い集客で推移しています。
一方で、ランクインはしていませんが、クラゲ展示に特化することで閉館の危機を乗り越えたという鶴岡市立加茂水族館、深海の生き物に特化した沼津港深海水族館(2011年開館)、ペンギンをメインに打ち出す形でリニューアルした長崎ペンギン水族館(2001年リニューアルオープン)など、特化型の水族館も増えてきており、多様性を増す傾向にあるようです。
それらを含めた全般的な状況は、特に上位施設については、新規施設が上位にランクインする中でも、横這いか入場数を積み増しているところが多く、特に2010年代に入って盛り上がりを見せている、ということになりそうです。
全般としての数値については、文部科学省が3年ごとに実施している、社会教育調査報告書での種類別博物館入場者数調査(博物館類似施設含む)にて、傾向が把握できるかもしれません。
平成26年度(2014年度)の調査結果が、平成28年(2016年)頃に出ると思われますが、そちらについては、【種類別博物館入場者数ランキング(類似施設含む)】にて、ランキング及び推移の形でご案内していく予定ですので、ご参照いただければ。
水族館、動物園の入場者数ランキングについては、別コーナーでご紹介しています。
【水族館入場者数ランキング】 沖縄美ら海水族館、海遊館、京都水族館、すみだ水族館、エプソン品川アクアスタジアム、サンシャイン国際水族館
参考文献:
「沖縄美ら海水族館が日本一になった理由」内田詮三著/光文社新社
「水族館革命 世界初!深海水族館のつくり方」石垣幸二著/宝島社新書
「全国水族館ガイド」中村元著/ソフトバンクパブリッシング